
国内最大級のマッチングアプリ「ペアーズ(Pairs)」をお使い方であれば、最近「おさそいアシスト」機能の仕様が大きく変わったことにお気づきでしょうか?
2025年10月下旬から11月上旬にかけて行われたリニューアルにより、この機能が以前とはまったく異なる、むしろ「改悪」とも言えるものになってしまったのではないかと、筆者は強い懸念を抱いています。
今回は、この「おさそいアシスト」の新旧の仕様を比較し、なぜこれが「改悪」だと感じるのか、その理由を掘り下げていきたいと思います。
「おさそいアシスト」とは?
まず、ペアーズの公式説明を見てみましょう。この機能は、マッチングしたお相手との関係を進展させるためのものです。
おさそいアシストとは、マッチングしたお相手とのメッセージにおいて、「もっと仲良くなりたい」「そろそろ通話してみたい」「そろそろ会ってみたい」といった気持ちを、メッセージ以外の形で伝えられる機能です。
(中略)
自分の言葉では伝えづらい、言いづらい事を機能を活用してさりげなく伝えることができます。
ここまでは、非常に便利な機能のように思えます。特に「デートに誘うタイミングが分からない」「断られたら怖い」と感じるユーザーにとっては、心強いサポート機能のはずでした。
リニューアル前後の「おさそいアシスト」
問題は、その「伝え方」がリニューアルによって根本的に変わってしまった点です。
【リニューアル前】両思いが確認できる「意思確認」機能だった
リニューアル前のコンセプトは以下の通りです。
リニューアル前は相手に伝えずにデート意向を登録してお互いの気持ちがマッチした時に伝えられるというコンセプトでした。
これが非常に重要です。以前は、自分が「そろそろ会ってみたい」と設定しても、それは相手には伝わりません。相手も「そろそろ会ってみたい」と設定した場合にのみ、「お互いに会いたがっていますよ」と通知される仕組みでした。
これは、いわば「こっそり行う意思確認」です。相手の気持ちが分からないままアプローチする勇気がない人でも、この機能を使えば「相手も同じ気持ちだ」という確証を得てから、安心してデートに誘うことができました。一方的な通知ではないため、気まずくなるリスクもありません。これは素晴らしい機能でした。
【リニューアル後】一方的な「好意の自動通知」機能に
しかし、新しい「おさそいアシスト」はどうでしょうか。公式の説明を見てみましょう。
リニューアル後はおさそいアシストを活用することで自分の気持ちをそっとアピールできるというコンセプトへ変わります。
「そっとアピール」とは聞こえが良いですが、その実態は次の説明で明らかになります。
設定した内容はお相手にも伝わります。
無理なく気持ちを共有できるので、メッセージだけでは伝わりにくい意図もスムーズに伝わります。
「え、ちょっと待って」と思いませんでしたか?
「相手に伝えずに登録」し、「お互いがマッチしたら通知」されるのが魅力だったのに、新機能では「設定したら(一方的に)お相手にも伝わる」のです。
これはもはや「アシスト」ではなく、単なる「自動通知」です。「そろそろ会ってみたい」とボタンを押した瞬間、相手の画面に「(あなたの名前)さんが『そろそろ会ってみたい』と思っています」という気持ちが伝わってしまうわけです。
個人的には改悪だと思う理由
この仕様変更が、なぜユーザーにとって「改悪」だと筆者が考えるのか。理由はシンプルです。
1. 「自分で伝える」からこそ意味がある
そもそも、好意は自分で伝えるからこそ意味があるものです。
メッセージのやり取りの中で、勇気を出して「今度、電話しませんか?」や「もしよければ、週末にお茶でもどうですか?」と切り出す。その「勇気」や「タイミング」、「言葉選び」にこそ、その人の誠意や人柄が表れます。
システムが「〇〇さんが会いたがっています」と無機質に通知してきたとして、それを受け取った側はどう思うでしょうか。嬉しいかもしれませんが、どこか「自分で言えないのかな?」という物足りなさや、味気なさを感じるのではないでしょうか。
2. 「そっと」のつもりが「重い」通知になる危険性
公式は「そっとアピール」「さりげなく伝える」と言いますが、これは実態と乖離しています。
まだメッセージを数往復しかしていない段階で、相手が「そろそろ会ってみたい」アシストを送ってきたらどうでしょう? 「さりげない」どころか「え、早くない?」とプレッシャーを感じ、むしろ「重い」と感じてしまう危険性があります。
リニューアル前は、お互いが同じ温度感になった瞬間にだけ通知されたため、そうしたミスマッチは起こりませんでした。しかし新機能では、この「温度感のズレ」が一方的に通知されてしまうのです。
3. 「断られたら怖い」を解決していない
新機能は、結局「自分の言葉では伝えづらい、言いづらい事」を本当に解決しているのでしょうか。
「会ってみたい」とアシストを送ったとして、相手がそれを無視したり、「まだ早い」と感じて返信が途絶えたりしたら? それは、勇気を出してメッセージで誘って断られることと、何ら変わりません。むしろ、システム経由で送った分、余計に気まずさが残る可能性すらあります。
本当にユーザーの背中を押したいのであれば、リニューアル前の「お互いの意思が合致した時だけ通知する」という仕組みこそが、最も優れた「アシスト」だったはずです。
まとめ
今回のリニューアルで、ペアーズの「おさそいアシスト」は、ユーザーの不安を取り除き、両思いを後押しする「安心」の機能から、一方的に好意を通知し、新たなプレッシャーや気まずさを生む「不安」な機能へと変わってしまったように感じます。
もちろん、「どうしても自分から切り出せない」という人にとって、この新機能が最後の手段として役立つ場面もあるかもしれません。しかし、それは「アシスト」ではなく、ただの「告白の代行」に近いものです。
恋愛の繊細なプロセスを、システムで自動化・効率化しようとすること自体に無理があるのかもしれません。筆者としては、あの絶妙なバランスを持っていたリニューアル前の機能が失われたことを、残念に思います。
皆さんは、この新しい「おさそいアシスト」、どう思われますか?



















